弱者の戦略とリーダシップ

こちらの記事を読んで自分が中学生の時のバレーボール大会のことを思い出したので記しておきたくなった。

「適切な戦略は、高度な戦術を不要にする 」の事例 – クラシコムジャーナル

 

自分の中学校には運動会や体育祭的なものがなく、代わりにバレーボール大会があった。紹介した記事と同様に男女それぞれ2チーム作るのだが、当然ながら、「Aチーム」(優勝を狙えるチーム)と「Bチーム」(掃き溜め)に分ける。資源配分的観点からは当然の選択だ。

 

Aチームにはバレー部が3人おり、優勝候補であった。Bチームは前述の通り、掃き溜めであったのだが、どういうわけかバレーボール部のI君は「俺はこっちのチームに行く」とBチームに入っていた。

 

自分もBチーム。実は球技全般が得意で、Bチームに入れられたことを苦々しく思っていたのだが、なにせメガネくんなので、見た目の問題で「さるねこはBチームだろ」というほぼ全員の意見の一致でBチームに入れられたのだ。

 

さて、ここで我々の戦略を理解してもらうため、当時のバレーボールのルールを記述しておく。

 

15点先取のサーブポイント制。

つまり、サーブ権を持った側がラリーに勝利しないと得点が入らない。

 

また、現在と大きく違いのはリベロが存在しなかったことだ。ローテーションが行われるので、I君がリベロになり一人でボールを拾いまくってなんとかするという戦術は取れないことを意味する。

 

そして、紹介した記事と大きく異なるのはバレーボールは相手を0点に押さえればなんとかなるというものではないということだ。15点「取らないと」勝てないのだ。

 

ここでI君が考えたBチームが取った作戦はこのとおりである。

 

1 とにかくなんでもいいので3回のタッチまでで相手にボールを返す

2 そのためにレシーブの練習を重点的に行う

3 サーブが入らないと点にならないので残りの練習時間はサーブの練習に充てる

 

 つまり、やることはレシーブとサーブの練習だけ。私はとにかく負けず嫌いなので、それで勝てるなら絶対やってやろうと思っていた。

 

バレーボール大会前は体育の授業がすべてバレーボールになり、チームごとに練習する。その時間、ほとんどレシーブの練習を行った。I君はとにかく教え上手で、なおかつ褒め上手であった。ちょっとでも上達すると「おおうまいうまい」と賞賛の言葉を送る。とにかくBチームに入れられて、なんとか一矢むくいてやろうとしている私は彼のいうことを忠実に実行していった。最初は全く続かなかったレシーブも徐々につながるようになる。上達するので、面白くなり、昼休みの時間もIくんと二人で自主的に練習するようになる。だから更に上達するという絵に描いたようなプラスのスパイラルが起こる。それを見た他のメンバーも徐々に自主練に参加するようになった。そしてみんな上達していく。

 

この頃になると私が格段に上達して、よほどの強いボールでなければ絶対にミスしないレベルまでになった。これでIくんと私を前衛と後衛に分けることができるようになった。

 

 これで自然に戦術が決まった。I君あるいは私が後衛のときは可能な限り相手のサービスのレシーバーになる。他のほとんどのメンバーも自分の正面にボールが来たらボールを上げれるようにはなっていたので、そのときは任せる。

 

 ワンタッチ目でボールがうまく自陣に上がったら、その後は相手にボールを返すことだけを考える。アタックにつなげることは考えない。最優先は相手にボールを返すこと。1タッチ目でも2タッチ目でも返してもOKとした。返してしまえさえすればあとは勝手に相手がミスしてくれるのを待つ。

 

 そして、サービス。先述の通り、当時はサーブポイント制だったので、サーブ権を持っているときにしか点が入らない。よって、どんなに弱くても良いのでサービスを相手コートに打つ練習をする。Iくんと私以外は上からいわゆるアンダーハンドサーブで確実に相手コートに入れる。Iくんも私もフローターサーブで確実に相手コートに入れる。

 

 こうした練習を積み重ねていき、チーム力はかなり向上した。ただ一人だけほとんど上達しないメンバーがいた名前を失念してしまったので、Aくんとしておこう。

Aくん。レシーブも他のメンバーに比べると成功確率が低くサーブもアンダーハンドでもほとんど入らない。身長は180cm近くあり、スポーツ万能そうなのだが、まったくできない。ようは「穴」だった。

 

ここでIくんと私は一計を案じた。「穴」だと気づかれると相手に狙われてしまう。よって本当の真正面以外はA君の近くのボールはI君あるいは私がボールにタッチする。問題はサーブ。アンダーハンドで入らないとういのが露見すると「あいつ、うまくねえな」と相手にバレ、相手サービス時に狙われる。そこで本人の自尊心を損なわないよう、こんな提案をした。

 

「お前は体がでかくてパワーがある。一発、上から思い切ったサーブを打っていいぞ。」

 

どうせ入らないのなら、僅かな可能性にかけた・・・わけではなく、他の連中がアンダーハンドで打っているのにあいつは強いボールを上から叩いてくる。ということは一発狙えるほどこいつはうまいんだぞという相手に思わせ、だからきっとレシーブもうまいのだろうと考えさせるようにしたのだ。

 

大会当日、4チーム総当りの予選リーグ。とにかく拾って、拾って、拾いまくる。見た目がうまそうなAくんにサービスが来ることはなかった。その代わりメガネで運動できなそうな私にボールが集まってくる。このときには私のレシーブは前衛にいるIくん(バレー部ではセッターだった)が一歩も動くことなくトスを上げられるような場所にボールをコントロールすることができるようになっていた。

 

とはいえ、アタックの練習など誰もしていないのでI君はトスを上げない。そのままトスをするふりをして2タッチ目でスパイクを決める。事前に相手のチームのことを研究していれば、通じないだろうが、当然そんなことしていないので、見事に相手はひっかかる。あっというまに7-1や8-0のポイント差になる。

 

流石にこのあたりになってくると相手もスパイクを打てる人間がいないことに気がつくが時既に遅し。そのまま押し切って勝利する。

 

2試合目もそんな感じで乗り切った。3試合目が始まる前。Iくんが私に小声で言った。

 

「さすがにスパイク打てる人間がいないのがあからさまにバレてきた。俺のツータッチ目でブロックつけてきてる。お前、レシーブがあがってトスする体制に入ったらバックアタックするふりしろ。相手、絶対釣られるから」

 

 3試合目。Iくんの言うとおりにすると、面白いように決まって、3連勝で決勝トーナメントに駒を進めた。

 

 そんな感じで我らがBチームは決勝まで進んだ。最後はバレー部が4人いるチームにボロクソに負けたが、準優勝という結果となった。

 

 さて、この話からなにを学べるか。戦略や戦術については件の記事と重なるので記載は避ける。

 

 ここで大事なのはリーダーとフォロワーである。Iくんというリーダーの言う通りとりあえずやってみたフォロワーである私。私が上達するのを見た残りのメンバーも大方がIくんの言うとおりにすれば上手になれるという確信を得ていく。そしてチーム力が向上する。

 

 リーダーとは「他人に対する前向きな影響力を与えることができる人」というのが私なりの定義だが、Iくんは正にそういう人であった。リーダーシップという言葉を聞く時、思い出すのは彼のことである。

3磐田が負けの場合


1 そのうえで鳥栖〇場合 →鳥栖は残留決定
  A 湘南〇 → 湘南と磐田が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋と磐田が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南と名古屋が残留 (磐田PO)
 
2 鳥栖が引き分けた場合 → 鳥栖は得失点差の関係で残留決定
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南と名古屋が残留 (磐田PO)

3 鳥栖が負けた場合 → 次の条件による
  A 磐田は自動で残留決定
  B 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋か鳥栖が得失点等でPO)
  C 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南か鳥栖が得失点差等でPO)
  D 名古屋△―湘南△の場合、湘南・名古屋が残留 (鳥栖PO)

 

2磐田が引き分けの場合

 まず、 磐田残留決定

1 そのうえで鳥栖〇場合 →鳥栖は残留決定
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南が残留 (名古屋PO)
 
2 鳥栖が引き分けた場合 → 鳥栖は得失点差の関係で残留決定
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南が残留 (名古屋PO)

3 鳥栖が負けた場合 → 次の条件による
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋か鳥栖が得失点等でPO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南か鳥栖が得失点差等でPO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南・名古屋が残留 (鳥栖PO)

1磐田が勝ちの場合

 まず、 磐田残留決定

1 そのうえで鳥栖〇場合 →鳥栖は残留決定
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南が残留 (名古屋PO)
 
2 鳥栖が引き分けた場合 → 鳥栖は得失点差の関係で残留決定
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋PO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南PO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南が残留 (名古屋PO)

3 鳥栖が負けた場合 → 次の条件による
  A 湘南〇 → 湘南が残留 (名古屋か鳥栖が得失点等でPO)
  B 名古屋〇 → 名古屋が残留 (湘南か鳥栖が得失点差等でPO)
  C 名古屋△―湘南△の場合、湘南・名古屋が残留 (鳥栖PO)

日本 vs アメリカ

何百も試合を見ていると、大抵の試合展開というのはカテゴリの違いこそあれ見たことがあるものになります。

立ち上がりにセットプレーから点を取られて、動揺したところに失点を重ねる。
余裕が出てきた相手にファインゴールを決められる。
ちょっと追いつきかけたところで、またあっさり決められる。

今日の試合について言えば、結果的には1点目が全てだったのでしょうね。おそらくは、日本を倒すためだけに何回も練習されてきたあのCKが1本目で決まってしまったというのがその後の展開を決定づけてしまったのでしょう。

そもそも、あのCKをよく一本目にやったなというのが驚きです。もし、あそこでゴールが入らなければ日本の選手たち、ベンチが修正できたはず。きっとアメリカは最初の10分に全力を尽くしたのでしょう。だから敢えてあの時間の一本目に使ってきた。

敢えて言えば、それは強者の戦い方でした。弱者を打ち負かすためのサッカーの常套手段は最初の15分で点差をつけること。
セットプレーからとはいえ、それを見事に遂行して見せたアメリカの戦いが見事だったということでしょうか。


という冷静な、無味乾燥な見方はこれくらいで、終わりにしてですね。


あああああああああああああああああああ、残念だなあ。

4点とったことで、アメリカがそんなにプレッシャーをかけてこなくなったことを差し引いても、点差ほどの差があったとは思えないんだよなあ。

3点目と4点目は、ああいう状況になったらもう仕方のないとして、1点目と2点目がなあああああああ。

1点目でロイドがペナルティエリアの外でどフリーになっているのは試合後の会見で佐々木監督も気づいていたとおっしゃっているので、そこが修正できなかったというのが痛かった。

1点目だけならまだしも、2点目も同じような形からやられてしまったのが本当に残念。

ああ、できればあの5分間をなかったことに。

正直、自分は決勝にこれただけで結構満足しているところがあって*1
失点を重ねていくたびに「まあ、仕方ないよな」という気持ちがあったのですが、やっぱり、決勝で負けるのは悔しいですね(T T)


とりあえずは、選手・スタッフの皆さんには、1ヶ月に渡る戦いを終えられて、お疲れ様でしたと言いたいです。

願わくは、女子サッカーの環境が今より少しでも良くなっていることを祈っております。

*1:大きな大会に3回連続で決勝というのはサッカーという不確定要素が大きなスポーツでは相当に難しいこと