彼が愛される理由


 試合が終わって、スタッフからコートを受け取り、それを羽織るジュビロの選手たち。
意気消沈したサポーターの待つゴール裏へ向かう。

 かき分けた雪が残るトラックまで近づこうとした時、彼は羽織っていたコートを脱ぎ、
静かにトラックに置いて、他の選手たちと一列に並んだ。初めからコートを手にしていなかった
鈴木秀人を除けば、彼だけがユニフォーム姿になった。

 この寒さで震えながら応援したサポーターたちなら、コートを着たまま挨拶しても選手を非難
しないだろう。でも、中山雅史はそうしたのだ。それが彼の流儀であり、誰からも愛される理由なのだろう。