とあるチームのゴール裏の光景を紹介したい。
そのチームのゴール裏には子供や女性が多い。もっとも、他のチームのゴール裏を私はほとんど知らないので、他と比べて比率が本当に多いのかどうかはわからない。
そのチームのホームスタジアムのゴール裏は狭く、声が通りづらい。中央でコールリーダーが叫んでも、横には声が聞こえない。そこでバックスタンドよりに無線機を付けたもう一人のコールリーダーがいて、彼が前者の声に合わせてコールを叫ぶ。
彼らのコールには愛がある。
「さあ、がんばろう」
「DFが疲れているから、呼んであげよう」
「もっと(声を)出せる!がんばろう」
そこで私は目を覚まされ、自分の声が少し小さくなっていたことに気づかされる。そして、大声を上げる。
あるアウェイでの試合のことだ。関東にもファンの多いそのチームだが、その試合は平日の夜に、東京からかなり遠い場所で行われた。
それでも、ゴール裏にはたくさんのサポーターが駆けつけた。私が予想していた以上に。
私の横は親子連れだった。階段を挟んだ向こう側は小学生らしき7,8人の子供たちの集団だった。
コールリーダーはいつものように、サポーターを励まし続ける。彼はそれが選手を励ますことになるということをよく理解しているのだろう。
「いいよ。声が出てるよ」
「もっと声、出そう」
「いいよー。ホント、今日、良く声が出てるよ」
いつの間にか前述の子供たちも立って、声を出して応援していた。おそらく初めてゴール裏へ来たであろう子供たちが、一緒に声を出していた。
「じゃあ、みんなに声を出してもらおう。せーのっ!!」
コールリーダーが子供たちにそう言うと、子供たちが一斉に声を上げた。
「ジュビ〜ロ磐田!!」
それに合わせて、太鼓が5回打ち鳴らされた後、私たち大人も大きな声で叫んだ。
「ジュビ〜ロ磐田!!」
私はこのチームのサポーターの一人であることを誇らしく思いながら、かつてないほど大声でサポートチームの名前を叫んだ。