代表選考から読み解く〜今後の日本の課題〜

 これまで述べてきたとおり、ザッケローニは極めてロジカルに選手を選考したと思う。DF、MF、FWそれぞれの先発メンバーに控えのメンバーをきちんと配置した。おそらく、下記の予想スタメンのうち2人くらい怪我人が出てもチームとしてのクオリティはそんなに下がらないであろう。これまでやってきたサッカーを本大会でも披露するという並々ならぬ決意が現れたセレクションだ。

予想スタメン
        柿谷

  香川    本田    岡崎

     遠藤   長谷部

長友  吉田    今野   内田

        川島

 その一方でチームから完全に捨て去ったものは「高さ」である。ハーフナー・マイク・豊田などが候補だったが、漏れている。これに関しては、以下の様な説明がある。

http://blog.livedoor.jp/footcalcio/archives/38120703.html
今回、選出されたFWに180センチ台後半の選手はいない。パワープレー要員となる長身FWを選ばなかった理由を「空中戦は日本のサッカー文化に深く浸透していない」とし、「代表選手もボールを失わないことを大切にする教育を受けており、成功体験に乏しく、指示を出しても具現化が難しい」と説明した。

 これは疑問を感じる。とはいえ、それはザッケローニに対してではなく、日本の選手たちに対してだ。

 確かに、日本の選手たちが背丈のある海外の選手たちと競り合って得点を取れるイメージはない。今回の中盤の選手たちを見れば、ロングボールをトップに当てて、それを拾ってなどということが不向きな選手であるのは理解できる。しかしながら、1点負けているロスタイムなどの場合に放り込みを行わないのは得点への選択肢をひとつ放棄しているのと同じだ。

 これは代表の問題というよりも日本サッカー全体の課題だと思う。パスをつなぐことが得意なチームは、試合終了が近づいていてもボールを繋ぐことが優先になってしまっているケースに陥りがちだ。しかし、Jリーグでも一部のチームはロングボールを放り込んでそれを拾うやり方で成功している。

 そして、ゴールを取るという目的を果たそうと思えば、早めにゴール前にボールを近づける方がゴールの確率は高くなる。「シュートは打たなきゃ入らない」というのが日本サッカーの昔からの課題でもあるが、「ゴール前にボールがないとシュートにすら行かない」ということも理解しておくべきだ。試合終了間際になってもボールを繋ぐことに一生懸命になっている選手を見ると、「こいつはサッカー脳がないな」と私は思ってしまう。

 もちろん、日本代表ましてやワールド・カップという大会で「自分が」活躍したいのはよく分かる。放り込みのサッカーでは輝けない選手たちが多いこのチームでそうした戦術に対してネガティブな反応を示すのもよく分かる。しかし、本当にワールド・カップで優勝したいと本気で思っているなら、放り込み戦術もまたサッカーであることを理解しなければならないと思う。

 それができるようになった時が日本代表が世界と伍することが可能になった時だと私は思うのだが。